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【サッカー日本代表新監督】森保一×ホリエモンが語る、日本サッカーの未来(中編)

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7月26日の日本サッカー協会の理事会で、次期サッカー日本代表監督への就任が決まった森保一氏。

ホリエモンが2016年に出した著書『なぜ君たちは一流のサッカー人からビジネスを学ばないの?』から、特別に森保監督(※対談当時はサンフレッチェ広島監督)とホリエモンの対談をお届けします!

集客率アップの法則

« 前編は コチラ

堀江 広島のスタジアムを作ろうという動きはいま、どうなっているんですか? 僕は絶対に市民球場跡地に作るべきだと思います。あそこに専用スタジアムができたら絶対にいろんな面で変われるはずですよ。

森保 それがなかなか具現化していかないんですよね。

堀江 広島って、Jリーグのプレミアリーグ化構想で考えると、ギリギリ入れるかどうかのクラブだと思うんです。もしも現在のJ1リーグの上にプレミアリーグができたら、東京に2チームと、大阪、神戸、京都のうちの2チーム、あとは福岡、札幌、仙台、静岡に1チームで、あとは新潟、広島が入るかどうか、みたいな感じになると思うんですが、そのときに専用スタジアムがあるか、それが街中にあるか、というのは大きなポイントになるというか。むしろ僕はJリーグのチームにそういう条件をつければいいと思っています。

そのくらいサッカーやJリーグの発展に専用スタジアムは大きく関わってくる要素ですから。だって、投資対象として考えるなら、やっぱりスポンサー収入以外に、入場料やグッズ売り上げ、ライブ売り上げが伸びているイメージがほしいから。そのためには駅近というか、街中にスタジアムが必要になる。プラス、単なるスタジアムではなく、プロ野球の広島カープが使用するマツダスタジアムみたいに『ボールパーク』のようなものができれば理想的ですね。

森保 本当におっしゃる通りだと思います。去年、我々が戦ったJリーグチャンピオンシップ決勝の第2戦の視聴率って、広島地区で平均35%だったんです。瞬間最高視聴率に至っては、40%を超えたらしく、その後に出場したFIFAクラブワールドカップの視聴率も、戦った試合の全てで広島地区は30%近い数字を記録した。全国的にみても、リーベル(アルゼンチン)とバルセロナ(スペイン)の決勝より、うちと広州恒大(中国)との3位決定戦の方が視聴率は高かったという話でしたしね。

それを踏まえて、今年の観客動員数がどのくらい増えるかと思っていたのですが、蓋を開けてみれば、観客動員数は増えていない。それはなぜかといえば、やっぱり場所の問題だと思うんです。専スタという以前にアクセスに難がある。だって、チャンピオンシップ(決勝第2戦)のときって、キックオフが19時半で、試合が終わったのが、21時過ぎ、そこから優勝セレモニーが行われましたからね。

それを観て帰った人で、公共交通機関を利用した人は、さらに1時間くらい待たなければいけなかったという話ですから。12月5日という真冬の寒さの中で震えながら待って、逃げ道になるようなものもコンビニが1つしかなくて、トイレに行こうと思ったらまた帰る列から外れて後ろに並ばなければいけない。で、ようやく街中にたどり着いたと思ったら終電は終わっていて家に帰れない、と。

そんな状況に陥ってまで試合を観に行くかと考えたら、コアなファンの人たちは来てくれるかもしれないけど、プラスアルファのライト層の人たちとか、優勝を決める試合だから、と新規で楽しみに来てくれた人たちは「二度と行くもんか」となりますよ。

堀江 すごくよく分かります。おっしゃる通りだと思います。

森保 テレビの視聴率で30%、40%をたたき出したということは、県内の占拠率で考えると100%に近い人たちに観てもらったということですからね。サッカーってそれだけのポテンシャルがありますよ、商品価値がありますよ、と示しているのに、それが今年に何ら結びついていないのは必ず原因があるはずなんです。

例えば、去年の優勝グッズにしても、せっかくTシャツなどいろんなものを作っても、手元に届いたのが今年のシーズンが幕を開けてからでした、なんて絶対にあってはいけない。そこにはクラブが出したアイデアを商品化するのに、一度Jリーグに申請しなければいけない、といった規定があることでタイムラグができてしまうという問題もあるのですが、そういうことから見直さないと、どれだけ結果を残しても気運は高まっていかないと思います。

そう言えば、もう10年ほど前の話ですが、広島カープのマーティ・ブラウン元監督が判定に抗議してベースを投げちゃったことがあったじゃないですか? あのときなんて、球団はすぐさまそのことをもじったTシャツを製作していましたからね。去年だってトピックス的なことが起きるとそれをすぐに商品化して売っていますから。そのくらいのアイデアとスピードをもってお客さんを巻き込みながら仕掛けていかないと、新しいファンも増えないですよ。

堀江 今、カープは本当に勢いがすごいですからね。二軍の選手に至るまで全員のレプリカユニフォームを作っていますから。

森保 スタジアムに行っても、先ほど堀江さんがおっしゃった通りで、まさしく「ボールパーク」というか、複合型施設みたいな感じになっていて、球場内には大型ショッピングモールのようなフードコートがあったり、子どもが遊ぶゲームセンターというか、アミューズメントパークみたいな場所があったり。

僕も実は、去年の8月6日に試合を観に行ったんですけど、広島にとっての8月6日というのは、原爆投下という悲しい歴史のあった日で、平和の祈りを捧げる日なので、以前はその日にスポーツはしないという考えがあったんです。でも近年はスポーツから平和を発信していこうという流れから、試合が行われるようになったんです。それもあって、どういうイベントをするのかを観に足を運んだら、マツダスタジアムはほぼ満員で。

どうしてこんなに人が集まるのかを観察していたら、要はスポーツも楽しむけど、公園に呑みに来ているだけの人がいたり、子どもなんかは滑り台を楽しそうに何度も滑っていたり、純粋に野球を観に来ただけではない人がたくさんいた。その層を取り込むための仕掛けが非常に巧いなと感じました。

堀江 メジャーリーグのボールパークだって、そんな感じで、来ている人の中には試合を観ていなかったりする人もいますからね。で、他の目当てのこと…食事や買い物を楽しんだ上で、その合間にちらっと試合を観ている。

森保 あと、広島って世界初の被爆地で、世界に知られた都市ですからね。市民球場跡地にスタジアムできれば、自然と、原爆ドームをみていただいて、原爆資料館や平和公園で歴史を感じていただいて、ということもできますしね。

堀江 世界的に有名な観光地であり、特に原爆ドームは世界遺産ですからね。

森保 実際に去年、われわれがクラブワールドカップでリーベルと試合したときも、試合は大阪の長居スタジアムで行われたんですが、リーベルのファンはその前後に広島を訪れてくれたそうです。彼らはレプリカユニフォームを着て練り歩くから、すごく目立っていたそうですが。また、試合前後に記者会見をしたときも、僕の隣で司会をしていたアルゼンチン出身でアメリカ在住のFIFAの職員が僕に言ってきたんです。「この大会が終わったら、僕は家族をアメリカから呼んで日本の観光をする。最初に行くのはピースパークだ」と。その言葉が全てで、広島って世界中の人が目を向けてくださる土地なんですよね。

だからこそ、広島もそういう平和を発信するツールのひとつとしてスポーツを利用してくれればいい。もちろん、広島には広島交響楽団というプロの楽団があったり、JTサンダーズというバレーボールチームがあったり、ハンドボールも強いし、ホッケーでも日本一を争うようなチームがあるなど、いろんなツールがあるとは思います。でも冷静に考えて、一番集客できるのはやっぱりサッカーですからね。だからこそ、ぜひサッカーを利用してもらいたいと思っています。

堀江 それはさっきおっしゃったチャンピオンシップの動員数や視聴率を見ても明らかですからね。マツダスタジアムのようなボールパークができれば理想です。

森保 でも、カープは動員戦略もうまいなって思いますよ。先ほど話した僕が観に行った試合でも…僕は3回の、ちょうどカープの守備のときに到着したんですが、コンコースが人で溢れているんです。フードコートもめちゃめちゃ賑わっていますし、グッズ売り場も、試合中なのに店内には人がたくさんいる、みたいな。ある意味、「この人たちは何をしに来たんだろう?」的な思いにもなるくらい、試合だけではなくスタジアムを楽しみに来ている。あれはうちのスタジアムでは見られない光景だと思います。しかもいま、めちゃくちゃきれいになりましたしね。

堀江 実はその『きれい』というのもすごく大事な要素なんです。だから神宮球場ってつくづくもったいないと思う。あんなにいい場所にあって、あのトイレの汚さですからね。あれでは女性が応援に行かない。

森保 一昨年、研修でドイツのスタジアムを観に行ったんです。そのときに聞いたのは「一時期、観客動員が伸び悩んでいたブンデスリーガが、2‌00‌6年のワールドカップの後から飛躍的に伸びたのは新しいスタジアムができたからだ」と。しかもどの層のファンが増えたかと言えば、女性と子どもだと。

で、じゃあ、なぜ女性が足を運んでくれるようになったのかと言えば、トイレと動線です。場所は郊外にあったとしても、動線が整えられて安全が確保されるようになったことや、それまでの立ち見席では誰がどこから体重をかけてくるのか分からないような危ない状況だったのにスタジアムができて、椅子が設置され、衛生面でも清潔になったことで、女性がスタジアムに来るようになり、イコール、男性もついてくるから観客動員が増えた。

堀江 それって簡単な理論で、ライブエンターテイメントを観に行くのって、実は女性が多いんです。例えば演劇や宝塚だって9割は女性ですからね。だから、その世界では男性をどうやって来させるかをみんな苦心しているんですが、サッカーや野球はお客さんの7〜8割は男性なんです。

そう考えても、女性をそういう場所に連れてくるのって、ちゃんとした設備にすれば実は簡単なんです。だからこそ、女性と子どもをいかにして取り込むかを一生懸命考えた方がいい。そうすれば、おっしゃる通りで男性は必ずついてきますから。でも、そういうリサーチもされているということは、新スタジアム計画も本格的に動いているということですよね?

森保 はい。あとは場所をどうするかというところです。うちの会長が3月に『広島市民球場跡地に作っていただけるならサンフレッチェ広島はそこを使いますが、宇品に作るなら、我々はそのスタジアムを使いません』と宣言していますからね。あとは行政との兼ね合いを含めて、どうなるかだと思います。

堀江 マツダスタジアムり、街中に作るのなら、儲かるスタジアムってできると思うんです。そのポイントは何かと言えば、さきほど森保さんもおっしゃった、ライト層をいかに取り込むかなんですよね。野球って下手したら3、4時間は平気でかかりますけど、サッカーって基本的に90分で終わるじゃないですか。ハーフタイム入れても2時間以内には終わる、と。

つまり、スタジアムが街中にさえあれば試合が終わったあとに呑みに行くことだってできる。そういうことも実はすごく大事だし、あと、アマチュアの子どもたちを取り込むために少年サッカーの試合とかぶらないようにするのも1つだと思います。Jリーグの試合の前に少年サッカーの試合をするとかね。芝が傷むとかいろいろ言われますけど、子どもがちょっとサッカーをするくらいのことは許してあげれば、そのままスタジアムに居残って試合を観てくれるし、そこには保護者もついてきますから。そういう丁寧なことをやっていけば、毎試合2万5000人を埋めるのって、実はそんなに難しい話じゃないと思いますよ。

森保 サンフレッチェは…というか僕もそうですけど、クラブもチームも、広島という土壌に生んでいただいて、広島に育てられてきましたからね。その恩返しとして、広島の皆さんにいいサッカーを魅せる、結果を出すということはもちろんですが、ピッチ外のところでも地域貢献活動をしていこうということは、伝統として守られているんです。

事実、いまも試合前のイベントで子どもに来てもらうとか、クラブのスクールコーチがいろんなところで地域の指導者と連携をとりながら子どものサッカースクールをするとか、そういう地道な活動を続けている。つまり、間違いなく日本のトップクラスだと胸を張れるくらい、地域との結びつきの中で熱心に活動しているクラブだと思います。でもだからこそ、いい場所にスタジアムができれば、これまで伸び悩んできた観客動員も大きく変化する可能性があるんじゃないかとも期待しています。

堀江 大きく変わると思いますよ。それはなぜかと言えば、近年はソーシャルメディアの影響もかなり大きくなってきたというか。ここにきて誰もがスマートフォンを持っている状況になったことにも助けられ、情報がより伝わりやすくなったんです。みんながネットやLINE、SNSで簡単に繋がれるようになり、例えば「サンフレッチェがいまこんなことをやっているよ」的な情報も一気に、簡単にパ〜ッと広まるようになった。昔はそれがなかったから、ライブでいろんな情報が伝わりにくかったと思うんですけどね。

だからこそ、地域密着のスポーツというビジネスは、これからもっと有望だと思うし、より可処分時間も大きくなりますからね。というのは、これからの日本は、だんだん仕事をしなくなるんです。AIのようなロボットも発達して、いろんなことがどんどん自動化されて、人間がやらなければいけない仕事がほとんどなくなるから、必然的に可処分時間がもっと増える。そうなれば、スポーツなど、エンターテイメントに惹かれる人ももっと増えるはずです。

・・・(続く)

 

対談全編ご覧になりたい方は、書籍『なぜ君たちは一流のサッカー人からビジネスを学ばないの?』ぜひご購入ください!

森保監督の他にも、ロシアW杯メンバーの川島永嗣選手や宇佐美貴史選手もホリエモンと対談しています。更には遠藤保仁選手、宮本恒靖さんも!要チェックです!

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