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【石田衣良×ホリエモン対談】出版業界にはチャンスしかない!

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今回は年始特別企画として、小説家の石田衣良さんとの対談の一部をお届けさせていただきます。

『池袋ウエストゲートパーク』シリーズをはじめ、数々のヒット作を持ち、今も最前線で活躍し続ける作家でありながら、2015年の秋にメルマガを開始した石田さんは、出版業界のどこに問題を感じていたのでしょうか? 出版業界の未来は本当に暗いのでしょうか。 ぜひお楽しみください!

信用とお金はリンクする

石田衣良(以下、石田) 今日は、メルマガに限らず、出版の世界でどのようなビジネスが可能なのか、いろいろと考えていきたいですね。よろしくお願いします。

堀江貴文(以下、堀江) こちらこそ。メルマガを拝見させていただいたのですが、けっこうがっつり作り込んでいますよね。石田さんは、どういう意図でメルマガを始められたんですか?


石田衣良さんのメルマガ『小説家と過ごす日曜日』
http://goo.gl/syyOzu

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石田 音楽CDの世界と同じで、本の世界も急激に縮小してますよね。これでは作家も出版社もジリ貧です。この何年か、なんとか手を打たなければいけないと思ってきたのですが、アーティストと違い、作家の世界にはライブや物販がないんですよね。あったとしてもものすごく小さな規模でしか行われていない。それで小説家が本を書くこと以外で収入を得る何か良い方法はないかと考えて、メルマガを始めてみたという感じです。

堀江 なるほど、でもどうして小説の世界には、ライブや物販に当たるものがないんでしょうか。例えば、漫画家だとライブはわかりませんが、キャラクタービジネスは成立しますよね。それから、原画を売ることもできる。原画は一番高い値段で売るとして、人気漫画家であれば、原画のコピーを売ることもできる。豪華装丁本を売るという方法もあると思います。

石田 うーん、小説家は、そうした「物」が少ないんですよね。ライブだとサイン会が該当するかもしれませんが、あくまで読者サービスの域を出ていない状態です。とにかく、小説を書いていれば、勝手に本が売れて左うちわでいられる時代ではなくなりました。戦前から戦後にかけて、新聞小説の原稿料は、今のお金の価値で換算すると、1枚30万円から40万円にもなりました。だから半年も連載すると、都内に庭付き一軒家が買えた。今はとてもそういう状況ではありません。新聞連載だとワンルームマンションがいいとこですね。
今日は、そういった出版界にまつわることを一つずつ詰めていくことで、今の出版界の改善すべき点が見えてくるようになればと思っています。

堀江 まず、僕自身の話をしてもいいですか。僕は専門の作家ではないのですが、たぶん、50冊以上の本を出しています。最初の本はちょうど20年くらい前に出したかな。ウェブに関する専門書でした。その本は初版から1万部も刷ってくれました。専門書で1万部ですよ。印税もしっかりもらいました。「いやあ、すごいなあ」と思いましたが、それでも、すでに当時から自分のビジネスで稼ぐほうが大きかった。だから、実は僕はずっと「収入を得ることを目標として」本を書いたことがなかったんです。
ただ、作家の人たちのビジネスモデルはずっと分析してきました。もちろんそれと同時に、ウェブサービスやコンテンツビジネスについて考えてきた。ただあくまで自分のビジネスを成功させるために考えたのであって、自分がコンテンツ制作者として稼ごうとしたわけではなかった。でも、今は例の事件の和解のために資産の99%を失ったので、自分が作ったコンテンツで収入を得なければいけなくなったんですね。

石田 すみません、ちょっと話を脱線させてしまいますが、資産を99%失うということに関して、どんな気持ちでしたか。淡々と手放すのは難しい金額だったと思いますけど。

堀江 でも、それについては何も感じなかったです。もともとそのお金が「自分の持ち物」だという感覚もなかったですし……。

石田 やっぱり堀江さんは人間離れしていますね。普通の人間はどうしても、自分が失くしたものを数えてしまうものだと思います。お金に限らず、別れた女の子のことをずっと憶えていて、何かふと寂しいときに思い出してしまったり……。

堀江 いや、もちろん「自分のもの」であれば、ちょっとは響いたかもしれないですけど、お金については、本当にそういう感じがなかったんです。今でもそうですね。なんというか、僕にとって、お金というのは、「景気」と同じようなものだと思っているんです。膨らんだり、萎んだりして、実体のないもの。
僕はむしろ「人間の信用」みたいなものにこそ「自分のもの」という実感があるんですよね。もちろん信用にも、バブルみたいに膨らんだり、ブシューッと萎んでしまうことはあるんだけど、基本的には少しずつ積み上げていくものですよね。それで、お金っていうのは、その積み上げていった信用の中から、必要だったら引き出せるようなもの、というようなイメージを持っているんです。

石田 そうかぁ。堀江さんにとっては、信用が実体で、お金はその影のようなもので、実体の大きさによって、吸い寄せられたり、離れていったりするということなんですね。

堀江 まあ、影というより、「形を変えたもの」と言ったほうが近いですけどね。とにかくお金と信用はリンクしている。でも、お金がなくなったからと言って、信用がなくなるわけではない。だから、たぶん、信用が実体なんでしょうね。
そして、その実体がウワーッと膨らんだり、キューッと萎んだりするのも分かっている。ただ、その信用みたいなものが簡単に生まれるかというと、そんなことはない……というようなことをずっと考えてきたんです。
とにかく、信用というものがあれば、お金も生まれてくる。だから、あまりお金のことは気にしない。心の中に打出の小槌を持っているような感覚です。

石田 なるほど。おもしろい。

メルマガ草創期の試行錯誤

石田 それで、企業経営から身を引いてから、ご自身がコンテンツ制作者として、収入を得ることになったわけですね。

堀江 そうですね。ただ、実はメルマガも最初から成功したわけではありませんでした。まず、メルマガを始めたのは、当時取り組んでいたプロジェクトに資金が必要になったことがきっかけでした。それで、どうやって資金を集めようかと考えたときに、最初は本を書こうと思ったんです。でも、ご存知の通り、出版業界では、発行部数も売上額も厳しくなってきていた。デジタルコンテンツにしても、アプローチがうまくいっていないのか、もうひとつ成功していない。そこで、目をつけたのがメルマガでした。当時から、日垣隆さん、村上龍さん、佐々木俊尚さんらがすでに始めてはいましたが、まだまだ怪しげなシステムを使っていました。

石田 メルマガの草創期ですね。その怪しげなシステムというのは、どのようなものだったんですか。

堀江 まだ有料メルマガの発行に特化したプラットフォームも今みたいに出揃ってなくて、情報商材の販売システムが使われていたりしました。「ナンパのしかたを教えます。50分間で彼女とsexするところまでをすべて実録音声つきで10万円」みたいなコンテンツが販売されているサイトなわけです。

石田 ああ、なるほど。ただそういう怪しさは、文化が立ち上げるときには必要なのかもしれない。今はもう立派になった出版社だって、終戦直後はみんな怪しい雑誌を作っていたわけですからね。

堀江 それで一応、そのサイトでアカウントを作ったりもしましたが、いざ本当にメルマガを始めるのは嫌だなと思ったんですね。ただ、自分でシステムを作って、運営するのも面倒だと思った。というのも、僕は1998年に自分で「メルマ」というメルマガのシステムをサイバーエージェントという会社と一緒に作ったことがあったんです。まぐまぐの当時の社長だった大川さんから、「うちのサービスをパクるな!」と言われたりして。「何言ってんだ、このオヤジは」と思いましたけど(笑)。

石田 でも、そのあと、まぐまぐと一緒に仕事することになるんでしょ?

堀江 大川さんのことは、まぐまぐを立ち上げる前から知っていたんです。彼は、大学を中退して、京都にあるコンサルティング会社で働いていたんです。地元の酒屋さんがカクヤスみたいな酒店にどんどんリニューアルしていった時期があったでしょ。あのコンサルタントをやっていたんですけど、その頃からの知り合いだったんですね。だから大川さんとはかれこれ20年くらいのつき合いなんです。

石田 みんな、いろんなことやってるんだねぇ。小説家も、カクヤスのお酒の卸しかたとか、なんでも勉強しなきゃいけないのかもね。

堀江 それで、僕にとって最初の有料メルマガとして、2000年くらいに、「メルマプレミアム」「まぐまぐプレミアム」というのを始めたんです。でも、これがまるでだめでした。

石田 まだ時期が早かったんでしょうか?

堀江 いや、時期が早いというよりは、コンテンツの内容が読者を満足させられなかったんだと思っています。もちろん、インターネットを使っている人々の裾野が思ったほど広がっていなかったということもあります。お金を持っているビジネスマンが、まだインターネットを使いこなしているとは言えない時代でしたし。とにかく読者が集まらなかったので、やめてしまった。
それからしばらしくして、あらためてまぐまぐの大川さんから「メルマガ、前やってたけど、やめたよね。今、盛り上がりつつあるから、うちでやらない?」と、結構いい条件で声をかけられた。「この条件なら自分でシステム作るより安いし、管理運営もしなくていいから楽だし、いいか」と思って、「まぐまぐ」で出直したんです。それからはおかげさまで読者も増えて、今でも続いている感じです。

コンテンツを売るのではなく、サービスを売る

石田 二回目の挑戦で読者を掴んだということですね。堀江さんから見て、メルマガを買う読者って、どういう人達だと思いますか? 僕はまだ「メルマガの読者像」というのがうまく掴めていないんです。

堀江 僕は、「デジタルコンテンツを売っている」という感覚をもっていないんです。そうじゃなくて、読者に「あ、これなら買ってもいいかな」と思わせるサービスを提供していると考えているんですよ。例えば、2回目のメルマガでは「Q&Aコーナー」を作ったんです。たぶん、メルマガに導入したのは僕が最初だと思うんですけど、これは「デジタルコンテンツ」ではなくて、「サービス」なんですよ。僕が考えた仕掛けとしては、思い切って「送られてきた質問すべてに返事をする」というものでした。1アカウントにつき1週間に1問、僕に質問をすることができて、それには必ず返事がもらえるということですね。最初は、どれくらい質問が来るのか、恐る恐るだったんですが、実際にやってみると、全購読者数のたかだか数%だったんです。

石田 数%でもすごい数でしょ?

堀江 ええ、まあかなりの数にはなります。ただ、答えるのが不可能という数でもなかった。それに、僕の方でも、質問が下手な人には容赦なく「質問が下手だ」と返しますから、どんどん質問のレベルも上がっていって、くだらない質問が来なくなるんです。今の質問率はおそらく1%を切っていると思います。でも、読者は満足してくれています。というのも、質問コーナーは公開ですから、「質問とその答え」だけを読むことにも意味があるんですね。自分と共通の悩みを抱えている人達からすれば、わざわざ自分で質問しなくても答えを得たことになるし、自分では考えつかない質問を読んで、問題点がクリアになることもある。まあ、そうやって「質問する読者」も「質問と答えを読む読者」も満足できるようにしていったんです。言ってみれば、ビジネスコンサルティングサービスを月800円で得られるわけですから、これはかなりお得ですよね。質問権を一つ200円で売っているという視点で見れば、「こんな安いサービスはない」とも言えます。

石田 なるほど。堀江さんは、やっぱりルールブレーカーなところがありますよね。与えられた器の中で「これをしよう」と考えるんじゃなくて、そもそもの器にどんな意味があるのかを定義しなおして、それに合わせて中身を作っていく。そこが大事なんだろうなぁ。今の出版界に一番足りないのはそこなんだろうと思う。

出版界が抱える問題は「つながり」が可視化されていないこと

石田 Q&Aの他に工夫しているところはありますか。

堀江 僕は、自分なりにいろいろと情報収集しているからなんですけど、ビジネスアイデアをいっぱい思いつくんです。ビジネスアイデアというのはだいたい、組み合わせなんですよね。「こういう状況がある。一方で、この人たちはこんなことに困っている。それじゃあ、これとこれを組み合わせたら、年商数千万円くらいのビジネスができるな」っていう感じで思いつくんです。でも、実際には、僕自身も、僕の周りの人も、他にやるべきことがあったりして、動かないことがほとんどなわけですよ。これはもったいないですよね。年商数千万のビジネスを求めている人は、世の中にはいっぱいいるわけです。だから、片っ端からそのアイデアをメルマガに書いているんです。つまり、年商数千万円になる可能性のあるビジネスアイデアを、毎週一本紹介しているんです。もちろん全部が全部使えるわけでもないと思いますけど、メルマガは年間1万円くらいですから、50本のアイデアを1万円で買えると考えれば、十分にペイするでしょう。

石田 これも、「コンテンツを作る」というより、ある種のアイデアを公開して、そのアイデアにアクセスできる権利を売るというところがミソなわけですね。

堀江 そうですね。それから、ニュース解説もしています。これは「僕しか出せないコンテンツ」ということを意識しています。僕独自の視点からの解説だから、佐々木俊尚さんとかとも競合にならない。ニュース自体は、もうどこでも読めてしまうから、とにかく人とは違った視点から解説するのがポイントです。
また最近、「今週のお題」というのを始めました。例えば、「今度、クロアチアに行くのですが、おいしいごはんやさんを教えてください」とか読者にお題を出すんです。すると、それについて詳しい読者が熱心に教えてくれる。先日、「僕がこれから着たらいいだろうTシャツ、見繕ってくれませんか?」って書いたら、30人くらいから応募が来たんです。さっそくポチポチポチとネットで買いましたよ。こういう読者に参加してもらう企画を入れていくことも意識しています。

石田 なるほど。まるで考え方が違うんだよね。僕たちはどうしても、「どう面白いソフトを作ろうか」というアプローチをしてしまう。だけど、堀江さんは、むしろコミュニケーションそのものを楽しめる仕組みを考えようとする。今の読者からすれば、そういう読みもののほうがおもしろくて、実は強いのかなぁ。堀江さんから見て、今の出版界が抱える一番の問題って、どこだと思いますか?

堀江 まずは、著者と読者のエンゲージメント、つながりが可視化されていないことでしょうね。

石田 ああ、そうですね。「モノを作って売ってしまったら、もうおしまい」という感じです。

堀江 まあ、雑誌について言えば、出版社と雑誌の読者との紐づけはある程度はできていると思いますが、その雑誌に連載している作家と読者の紐づけはまるでされていないと思いますね。例えば、アマゾンでもそういう紐付けがなされていませんね。僕は今、「マンガHONZ」という漫画のウェブサイトもやっているんですが、そこでやろうとしているのが、まさに「作家にファンをつける」ということなんです。
例えば、僕はしげの秀一さんの『頭文字(イニシャル)D』という漫画が大好きなんです。このマンガの連載は2013年に終わったんですが、ある時、僕が「しげのさんの次回作が楽しみだ」とマンガサイトの仲間たちと話していたら、「いや、堀江さん、新しいのが出てますよ」って言われたんです。調べてみたら、短期の連載、単行本2冊分くらいの作品を描いていた。内容は私小説みたいな感じで、50代のおやじが20代のギャルとつきあって…みたいな筋なんですけど。それって単にしげのさんの願望なんじゃないんですか? みたいな。

石田 そういうの、やりたくなるんだよね(笑)。というより、実話だと思いますよ(笑)。

堀江 でしょうね。それで、まあ、それはいいんですが、考えなくちゃいけないのは、しげの漫画のファンである僕が新作が出ていることを知らなかったってことですよ。アマゾンも教えてくれないし、出版社も教えてくれないし、もちろん、しげのさんも教えてくれない。それなのに、読者はどうやって新作に辿り着くのかなっていう話です。こういう状態があるから、出版界に元気がなくなっているんだと思いますね。
人気作家であれば、次も人気作を書かなきゃいけないとプレッシャーを感じて生きてるはずですよね。まあ、適度なプレッシャーは作品作りに必要だと思いますけど、漫画家の中にはそういうのに押しつぶされてしまう人も結構いると思うんです。でも、面白い作品を読みたい読者からすると、それは困るんです。だから、少なくとも実力のある人気作家の人に対しては「先生の本は、出したら50万部、100万部は売れますよ」という感じのシステムを作っておかないと。そうすれば、漫画家も安心できるし、好きなものが書けるでしょ。

石田 いや、それはそうなんですが、実現させるのはそんなに簡単ではないですよね。というのは、昔はわりと、読者やファンが「作家」についていたんです。「池波正太郎だったら読む」みたいに。だけど、今は「作品」につくんです。だから、例えば、又吉くんの『火花』も今回は200万部を超えたけれども、次は10分の1くらいになるでしょうね。10分の1でもそれはすごいことだと思います。大ベストセラーを書いた後に、鳴かず飛ばずになってしまう作家はいくらでもいます。同じ作家の書いた作品でも、バカ売れする本とまるで売れない本があるんです。まあ、こうした状況も、作家と出版社が読者とのエンゲージメントを開拓していないからとも言えますが。

堀江 そう! まさに、そこなんですよ! 作品によって売れ行きに差があるのは当然です。僕の本だって、30万部以上売れるものもあれば、3万部しか出ないものもある。そこで目指すべきなのは、「ベース」を作ることだと思うんです。僕の場合は、それが「メルマガ」です。今、僕のメルマガ読者数は15000人くらいですが、彼らがそれぞれ毎月800円を払ってくれる。これがベースです。印税率もメルマガの方が本よりも良いということもありますが、これでだいたい毎年100万部を超えるベストセラーを毎年出している作家ということになるんです。

石田 要は、本を売るのって、CDを売るのと同じで薄利多売なんです。それはそれでいいのですが、問題は「それしかしていない」ことですね。だから、例えば、ミュージシャンが、ライブをしたり、物販をしたりするように、言ってみれば中規模なお布施を熱心なファンにお願いするというのもやっていかなければいけないのかもしれないですね。堀江さんの場合は、それがメルマガだったと。僕がメルマガをはじめたのも、こうした作者と読者の結びつきは出版界には今までなかったものなのでおもしろいと思ったんです。

ピラミッドを作る

堀江 それで、僕と僕のファンや読者との関係は、ピラミッド状になっているんです。僕のツイッターや無料記事を見ているだけの人が100万人から200万人いる。その上に、メルマガを読んでくれる人が15000人。僕はその上に、「サロン」と呼んでいる月1万円の席を用意しました。そこには会員が650人ほどいて、さらにその上に月50万円のVIPの法人会員が50人いる。

 

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『堀江貴文のブログでは言えない話』
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